散骨その実情
死と共に自然に帰る。お骨を風に乗せて大地に。ボートから波に乗せて大海原に。大自然に故人を包んでもらう。散骨は自然回帰を目指す自然葬の代表例です。
散骨は故人の思い出の地に
故人の遺灰を海や山にまく「散骨」。自然の中で行うその行為は感動を呼ぶ、そんなイメージがありませんか。
今、散骨をする方が少しずつ増えているといわれています。海が好きだった父の意思を継いで海に散骨したり、何かあると登っていたおばあちゃんの大好きだった里山に散骨するなど、故人の思い出の地であったり、大好きだった場所に散骨をしてあげたいところです。
一昔前は、散骨は違法だと思われていましたが、NPO法人の「葬送の自由をすすめる会」が1991年に遺灰を相模灘でまき、遺灰を山や海にまくことは古来からの日本での葬送であるという主張を国も認める形となりました。
ちなみに同会はさらに、現行の「墓埋法」を改め、葬送の自由を認めよという「葬送基本法」の制定を提案しています。
- 故人の好きだった海への自然葬。
- 写真提供:葬送の自由をすすめる会
「世界の中心で、愛をさけぶ」などの映画の中での散骨シーンや、有名人が散骨をしたことで次第に知られてきた散骨。勝新太郎や石原裕次郎、イギリスのロックグループ クィーンのボーカルのフレディー・マーキュリーなどが海に散骨したことでも知られています。また最近では、韓流ドラマでもよく目にするシーンだと思います。
散骨に関しての意識調査によると、肯定的な意見が全体の74.4%を占めたということは、上記のようなドラマや映画の影響がかなり大きいのではないでしょうか。
そして、散骨希望者の理由として時代を反映しているのではないかと思われるのが、「あの世にまで、家族、姑、舅などのシガラミを持っていきたくない、もめるくらいなら散骨して欲しい」というもの。
しかし、いざ散骨となると供養ができないという理由で、結局親戚や家族の反対にあうケースも多いようです。散骨を希望する場合は、それに関わる人たちの気持ちを考え、よく話し合うことが必要ではないでしょうか。また分骨をして、一部を散骨するということもひとつの方法です。
周囲の心情にも配慮が必要
また、散骨の行われ方によっては、紛争が生じる可能性も否定できません。陸地に散骨をする場合、土地所有者の許可をとっていたとしても、その地域に住む住民から苦情がでるケースもあるため注意が必要です。市町村によっては、散骨を規制する独自の条例を設けるなどの対策をしているケースもあります。そのため陸地での散骨の多くは、宗教法人がもつ墓地で行われているというのが実情のようです。
こういった自然葬は、市場の拡大と共に民間企業の参入なども活発に行われているようですが、ビジネスとしての散骨に反発する動きもあり、また実際に散骨をするとなると抵抗を感じる人が多いのも事実です。先にも述べたとおり、自治体が条例を設けて散骨を規制する動きもあります。今後、条例などが増える可能性も十分予想できるので、散骨に興味がある方は安易に決断をせず、トラブルを回避するためにも事前にしっかりと確認をするといいでしょう。