美しくあの世に送りたい
旅立ちに際し、遺族と故人が語り合う大切な時間。それは故人の体を清め、死化粧を施すときではないでしょうか。人生の幕を美しくしめくくる納棺師の仕事とは? さらに、遺体の腐敗を防ぐエンバーミングの目的とは? これらの仕事は、映画やドラマなどで大きな話題となったために、就職希望者が増えているともいわれています。
感動を呼ぶ納棺師の仕事
世界中の人々に感動を与えた映画「おくりびと」のヒットにより、一躍脚光を浴びた納棺師というお仕事。そしてドラマ「死化粧師」では、エンバーマーというお仕事が広く世の中に知られるようになりました。
どちらも、遺体を美しく整えてあの世に送り出すというものです。
「おくりびと」では遺族の方が見守る中、粛々と納棺の儀が進められていきます。ご遺体を拭き清め、死化粧を施す。そして棺に納め、最後に副葬品を入れてお見送りします。
この時、遺族の方々も手を添えます。涙にむせる人、故人に感謝の言葉を告げる人。
しっかりと故人の死を受け入れ、旅立ちを認識する大切な時間です。
このように、しっかりと遺族の方々にお別れするということを受け入れてもらい、厳粛でおだやかな雰囲気を作ることも納棺師の仕事の一つ。
現状では、納棺の儀は葬儀屋が行う一連の仕事の中で行われ、納棺は葬儀屋の担当者が行うことが多いようです。
- 映画「おくりびと」で有名になりました。
- 一つひとつ身なりを整えていきます。
エンバーミングを行う理由
エンバーマーとはエンバーミングを行う人のこと。
では、エンバーミングとは何でしょう。日本語では、死体防腐処理と翻訳されることが多いようです。死後時間がたつと遺体の腐敗が進みます。感染症などで亡くなった方は、そのままだと感染を広げてしまう可能性もでてきます。エンバーミングとは、そういった事象を解決すべく、衛生的に保全する処置を行うことです。
エンバーミングのような"遺体をきれいな状態で保存する"という考え方の歴史は古く、その起源は古代エジプトのミイラにまでさかのぼります。死体防腐処理をされ生前の姿が見ることができる、歴史的な偉人をご存知の方もいらっしゃるでしょう。ロシア革命の指導者、レーニンなどは非常に有名です。その他にもエンバーミングを施すと、葬儀の準備をゆっくりとできる、遺体の長距離搬送を可能にする、といったメリットがあります。
また、病気でやつれてしまった場合でも、元気な頃により近づける処理を施すことも可能です。
現在のようなエンバーミングの形はアメリカの南北戦争のときに、戦死した兵士の移送を行うために始まったとされ、アメリカ・カナダでは90~95%、イギリス・北ヨーロッパでは70~75%、シンガポールでも約70%と、世界各地で広く利用されています。
日本では死後数日で火葬をする場合が多いことから、エンバーミングはそれほど必要とされてこなかったようですが、広く知られることによって、今後希望者が増える可能性もありそうです。
- エンバーミング施設
- 写真提供:ジーエスアイ