お焚き上げで故人の遺品を供養
日本に古くからある「物には魂が宿る」という考え方。大切な人が残していった思い出の品々なら、その想いもいっそう強いのではないでしょうか。故人の大切な品だからしっかりと供養したい、故人のもとへ送ってあげたい、そうした日本人の心からお焚き上げ供養は生まれました。
思い出の品を、故人のもとへ
大切な人が突然亡くなってしまったときには、葬儀の手配やご遺骨の整理など、悲しむ間もないくらい慌しく時間が過ぎ去っていきます。
ようやく落ち着いたときに手元に残るのは、故人の想いが詰まった遺品の数々。すべてを「手元で大切に保管しておきたい」という気持ちもあると思いますが、そうもいかないのが現実です。昔は形見分けなども頻繁に行われていたようですが、家族や親戚のあり方の変化もあり、最近では行われにくくなっているというのが現状のよう。だからといって、思い出の品をゴミとして処分するわけにもいきません。どうしていいか分からずに、物入れに押し込んでしまっている人も多いのではないでしょうか。そうした問題を解決してくれるのがお焚き上げです。
焚き上げとは、日本に古くからある「想いのこもった品物には魂が宿る」という考えにもとづき、お経を上げることで魂を抜き、その後焼却して供養をするという儀式のこと。また故人が大切にしていたものを、「あちらの世界でも使えるように送ってあげたい」という意味合いで利用する人も多いようです。
- 故人の愛用品を天へと送ります。
- 写真提供:焚上協会
これまでは神社やお寺にお願いすることが一般的でしたが、環境問題への配慮や環境条例などの問題から、お焚き上げを控える傾向も見られます。
そうした現状を受け、自社で焼却施設を備えた、お焚き上げを代行する民間企業も登場してきました。
お焚き上げは、焼いて供養するという性質上、ビニールや金属類については利用することができませんが、遺品の他にも、故人が最後に使ったお布団や衣類、処分に困った仏壇、お守り、ぬいぐるみ、写真など想いのこもった品物を供養する際にも利用されています。
故人の愛用品も故人と一緒に供養してあげたい、大切にしてきた品物だからしっかりとお別れがしたい、お焚き上げはこうした日本人の思想が反映された、お見送りのひとつの形といえるのではないでしょうか。
- お焚き上げに使われる焚上焼納場。
- 写真提供:焚上協会