故人の心に寄り添う仏壇のいま
江戸時代から私たちの生活に広がり始めた仏壇。故人の位牌や写真に向き合い、お線香を上げて手を合わせることで、故人に語りかける、私たち日本人にとってはなじみの深いものです。最近では、手軽に置けるコンパクトサイズの仏壇や、インテリアとして見ても遜色のないようなモダンな仏壇が数多く登場しています。
仏壇を置く習慣は、制度によって生まれた?
故人の位牌や写真と向き合い、お線香を上げて静かに手を合わせる、今日の出来事を話したり、人にはいえない悩みを相談することもあるかもしれません。仏壇は故人との思い出を呼び起こし、故人と家族をいつまでも結び続けてくれる心の接点です。
仏壇が私たちの生活に広まり始めたのは、江戸時代に幕府がしいた「民衆はいずれかの寺院を菩提寺として、その檀家となることを義務づける」とした寺請制度(てらうけせいど)がきっかけとされています。家に仏壇を置いたり、法要の際に僧侶を招くといった多くの習慣もこのときに生まれました。
時代の移り変わりによって、緩やかに形を変えてきた仏壇ですが、近年、そのあり方に大きな転機が訪れています。
- 仏壇は故人と家族が向き合う場所
弔う気持ちが生んだ、新しい仏壇の数々
住環境や家族構成の変化に伴い、今までのような大きな仏壇を持ちにくくなった現代では、家具などの上に安置できる仏壇が増えています。
仏像や経典、位牌などを安置する仏具の一種「厨子(ずし)」を、小型の仏壇として使用するケースも増えているそう。
さらに、携帯仏壇と呼ばれる手のひらサイズの仏壇も登場。自宅で仏壇の代わりとして使うというよりは、「出張や旅行にも位牌を持っていきたい」、「老人ホームや病院には仏壇は持っていけないし・・・」といった理由で使用されることが多いようです。
- 厨子を使った小型の仏壇。
- 部屋の片隅にインテリア感覚で。
- 写真提供:ギャラリー禅
また、インテリアとして見ても遜色のない、高いデザイン性を備えた仏壇も数多く登場。部屋の雰囲気にフィットした家具調の仏壇やステンドグラスがはめられた仏壇、洋風の家具を思わせるモダンな仏壇、収納家具の一室に収まるコンパクトサイズの仏壇、ダイニングやリビングで使える壁掛け式の仏壇など、ライフスタイルに合わせて家族に寄り添うように、仏壇も形を変えています。
これから先、時代とともに仏壇の多様化や供養の形の変化といった流れは、ますます進んでいくでしょう。しかし、私たち日本人がこれまでに培ってきた「故人を思う気持ち」は、いつまでも変わらずに受け継いでいきたいものです。
- リビングにも馴染む家具調仏壇。
- 通常の仏壇同様、
位牌や写真も飾れます。 - 写真提供:ギャラリー禅