「いわゆる「永代供養墓」の現状」<前編>
● 全国にある400を超える「永代供養墓」の現状(分布・開設年)
「永代供養墓」は全国でどのくらいあるのでしょうか。
統計を基にした正確な数字はわかりません(何故なら、先に述べた通り、そもそもの定義が明確ではないからです)が、「永代供養墓」を紹介している書籍、資料、文献などを中心に、その他、インターネットなどを通すと412件の「永代供養墓」を抽出することが出来ました(ちなみに、調査する者によっては、「1,000件を超えている」と、述べる方さえもおられますが、こうした違いが生じるのは、まさしく「定義が曖昧」であることに起因しているといわざるを得ません)。
以下、それらを分析することによって、すでに誕生から20年、いわば「成人式」を迎えようとしている永代供養墓の現状を明らかにしてみたいと思います。
まずは、地域別の分布状況から見てゆくこととしましょう。
関東にあるものだけで優に約六割を占めています。さらに詳しく見ると、東京都に限っても他の地域の倍で79件。つまり全国にある永代供養墓の約2割が東京都に集中しており、加えて、都に隣接する神奈川、埼玉の両県は共に40数件。つまり、東京都と隣接する2県だけで全国の4割以上の永代供養墓が集中しています。
したがって現在でも、大々的な形で「永代供養墓」を謳わず、ここでの数字に表れないままに淡々と運営されているものも少なくないのではないでしょうか(前述したとおり、「調査する者によっては、『1,000件を超えている』と、述べる方さえもおられますが、こうした違いが生じるのは、まさしく「定義が曖昧」であることに起因しているといわざるを得ません」ということを裏付けるものであります)。
ところで、他に見逃せないのが、直近の5年間、2001年から2005年にかけて造られたのが113件に留まっているということです。それ以前の5年のうちに造られた186件と比べると建立件数がわずか6割程度にとどまっています。
これは施設としてポピュラーになり過ぎて、ことさらに騒がれる対象とはならなくなったために数が滅ってしまったように見えるのか、単に、新聞や雑誌、さらにはホームページなどの媒体への積極的な掲載が控えられるようになったためなのか、あるいはそもそもの実数が減少に転じたのか、このデータだけではわかりません。
しかし、水代供養墓がひとつのピークを終えつつあり、新たな展開を必要としていると言うことはできるでしょう。
次に、開設年はいつごろが多いのでしょうか。
最も多く造られたのが、1996年から2000年にかけての5年間、186件になります。過去に遡っても、1990年以前には41件、1991年から1995年では70件でしかないのですから、1996年から2000年にかけての5年間に(やや大袈裟ですが)爆発的ともいえる増加と申せましょう(ちなみに、この5年間を1年毎にみてみると、毎年40件前後で均等な増加であり、目立った偏りはありません)。
ちなみに、1990年以前に造られた41件については、「無縁になってしまったから(お墓を)整理する為に設けた」といったような受動的な形のものが多いようです(しかし、なかには、世間一般で「永代供養墓」の希望者としてイメージされているような「葬式が出せない」もしくは、「お墓を追ってくれる人もいない」という方が使用者である場合がない訳ではありません。そうした方々は落ち着く先を探しあぐね、結果として、「貴寺とのゆかりはないものの、何とか、無縁塔(塚)でもいいから入れていただけないか」というような経緯で使用者となったケースも珍しくはなかったようです。