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納骨堂を選ぶコツからペットのお墓まで

納骨堂と似て非なる「永代供養墓」とは何か?<後編>

<前編から続く>

● いわゆる「永代供養墓」が造られるようになった背景


古くからの寺院境内墓地とは異なる、使用者の宗旨や宗派を問わない、いわゆる「民営霊園」が都市近郊に造られ始めたのは昭和40年前後のことです。
それ以前の墓地といえば、もっぱら共同(共葬・集落)墓地か寺院の境内墓地、あるいは各自治体における公営墓地などしかありませんでした。そこから、都市部への人口の集約化、イエの核家族化、それに生前に墓地を求める人の増加など、新しい需要が生まれたことによって、いわゆる、先に述べたような「民営墓地」という新しい受け皿への集中をみせることになったのです。そうした状況のなかで、多くの人々がお墓のあり方に対する疑問を募らせてゆくことになります。


その「疑問」は大きく二つに分けられます。第一に、「イエ」というものとの関係のみでお墓が捉えられている疑問。もう一つは、民営墓地が野山を切り問いて次々と開発されることに対する疑問です。前者の疑問は、核家族化に伴ってお墓の継承者の不在という事態から生まれ、それが今日の「永代供養墓」の誕生に至ることになります。また、自然破壊ともいえる後者の問題は、「自然葬」(撒骨)という葬法が提案されることともなります。この「自然葬」なる行為については「葬送の自由をすすめる会」(代表・安田睦彦)という団体が中心となって行われていますが、初めて行われたのは、平成3(1991)年、神奈川県相模灘の沖合でした。
注目すべきは、ちょうど同じ頃に「永代供養墓」が誕生したことです。今から考えると、この時期がわが国の墓制におけるターニングポイントだったといえるでしょう。


話を永代供養墓に関係すること戻します。そのためには何故「民間霊園」なるものが広く受容されることとなり、これが市民権を得るに至ったのかということに目を向けなくてはなりません。もっとも直接的な影響として考えられるのは、お墓の入手方法が変化し、民営墓地における「契約」の考え方が一般に浸透したことでしょう。それが、本来は信仰の場である寺院境内墓地にまで及んだことです。しかし、その頃の一般的な墓地使用規則(契約)を改めて読み返して見ると、跡継ぎのない使用申込者は受け入れないという状況が依然として残ったままでした。これが先述した、「『イエ』というものとの関係のみで『お墓』がとらえられている」という指摘の根拠となるのです。
そうした現状に、「なぜだ」「どうしたらいいんだ」という問題提起がなされるようになり、結果、「承継者の有無が問われないお墓があってもいんじゃあないか」となったのだと思われます。


● いわゆる「無縁墓」から「永代供養墓」への"脱皮"


そもそも、永代供養という「行為」は、「お墓」がある、なしにかかわらず、寺院やご住職(宗教行為の司祭者)に対して、「私に対して特別に想いを馳せてください」と頼むことだったのではないでしょうか。そして、そのためにしかるべき布施を行う。それを受け取った寺院なりご住職は三十三回忌、あるいはご住職が代替わりするまで、その人(故人)を供養するというものであったはずです。つまり、「永代供養料」というのは、本来、墓地(お墓)の使用権とは関係なかったのです。
しかし、前述した通り、「契約」を前提とした民営墓地が出現したことによって、その差別化に迫られたような形で「お墓を永代供養する」ということになってしまったわけです。ですから、現在の永代供養墓の中には、世間から「合祀墓」や「合葬墓」という施設のあり方でもって、これらが注目されたことで、以前からあった無縁墓・塚(塔) の見栄えを良くして、それを「永代供養墓」にする場合も見られました。確かに、いまでこそ「永代供養墓」は当たり前のように市民権を得たような佇まいをしてはおりますが、その立ち上げ当初の苦労話などを改めてお聞きすると、感慨を込めて、「ああ、無縁ね」と話されるご住職もおられます。
では、結果、今日の永代供養墓が当時(かつて)の無縁墓とどれだけ違うのかというと、本質的には全く変わってないのかもしれません。実際、ご住職のなかには「単に言い換えただけ」とおっしゃる方もいます。ただ、かつては「イエ」の墓の帰結であったものが、現在では、生前からの枠組みから外れてしまった人々にとって、代々承継され得ないことを前提としたお墓の意味になっていることは間違いありません。


次回はその現状(分布や開設年など)について詳しくお話しします。

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